初めてなのに懐かしい
40年間愛される、まんじゅう屋さん

田中万十店 松尾本店

2024.12.17
熊本県熊本市

初めてなのに懐かしい

40年間愛される、まんじゅう屋さん

創業時から同じ製法で同じ味を守りながら、地元の人たちに愛されるまんじゅうを作り続けるお店があります。弾力のある生地とほのかに香る甘酒の風味。こしあんの軽やかな甘さが口いっぱいに広がり、初めて食べた人でも不思議と懐かしさを覚えるのが田中万十店の甘酒万十です。40年前から変わらないこの味を求めて、平日でもお客さまが後を絶ちません。このおいしさの秘密はどこにあるのでしょう。店主の田中康雄さんは「材料や製法など特別なことはしていません。食べた人がおいしく感じるように試行錯誤しながらおいしさを追求してきた結果、今の作り方にたどりつきました」と語ります。気持ちを込めて作り続けてきたまんじゅうは、今なおロングセラー商品として売れ続けています。
田中さんがまんじゅう屋を始めたのは33歳の時です。それまで電気工をしていましたが、一念発起して開業しました。通常ならあんこ作りだけで10年はかかると言われる和菓子の世界ですが、田中さんに与えられた修行期間はわずか1ヶ月。その間に必死で作り方を真似しながら大事なところをメモに取りました。開業当初は何もかもが手探りだったと言います。四畳半しかない小さなお店で田中さんはどうすればもっとおいしくなるかを考えながら包み方やあんこのこね方など、教わったことに少しずつアレンジを加えました。次第に田中さんのまんじゅうは評判になり、平均睡眠時間は3時間、休みは3ヶ月で1日あればというほど多忙な生活が続くようになります。そうして味に磨きをかけることで、多い時には一日5千個を売り上げる看板商品になっていったのです。
田中万十店では甘酒万十以外にも定番商品や季節に合わせた限定商品がショーケースに並んでいます。こうした商品は、お店が大きくなるにつれてお客さまを飽きさせないように一品ずつ増やしていったものです。甘酒万十と並んで同店に欠かせない定番商品が、いきなり団子です。「いきなり」は熊本の方言で「簡単に」という意味があります。もともとこの地域ではどの家庭でも団子を作っていました。田中さんは、昔おばあさんが作っていた団子を思い出しながら、その味を再現しました。大豆とお芋のバランスが絶妙な田中万十店のいきなり団子は、熊本を代表する逸品をとして熊本県の観光ガイドにも紹介され、県外の観光客からも人気の商品になっています。
現在、熊本市内で松尾本店と銭塘店の2店舗を構える田中万十店ですが、銭塘店はもともと手狭になった本店をサポートするための工場兼用の店舗として開店しました。当時はお金に余裕がなかったため、お店のほとんどを田中さん自身でつくりました。それでも内装のショーケースなどにかけるお金が足りずに困っていたところ、奥さまがタンス預金から資金のサポートをしてくれました。その後、工場機能も本店に移動しましたが苦しい時に影で支えてくれた家族への感謝の気持ちは忘れることはありません。現在、第一線から退いた田中さんは、息子さんにお店を任せながら長年付き合いのあるお客さまの応対をしています。田中さんのおいしさを追求する姿勢と製法は息子さんにも引き継がれ、変わらぬ味で地元の人たちに愛されています。

田中万十店 松尾本店

電話番号 096-329-1233
住所 熊本県熊本市西区松尾2丁目2-50
営業時間 9:00〜17:30
定休日 年始
U R L https://tanakamanjuuten.com/